私が今の仕事をしている
原点となっているのは
両親の離婚体験です
当時、まだ14歳だった私は
当然のことながら
超未熟な人生経験や知識や情報処理能力など
子供ながらの持ち物の中で
必死に
両親に起こったことを
分析して
理解、理由づけをしようとしました
その分析、理解、理由付け、が
現在まで
約30年続いた、という感じです
現在、45歳
当時の父の年齢と同じになりました
当時の母よりは年上になりました
それだけ人生経験を経て
また、
円満離婚弁護士という仕事をさせてもらって
さまざまな沢山のご夫婦を見させていただいて
離婚のケースに立ち合わせていただいて
この研究、分析、仮説立て
のようなことが
ようやくできたきたように
最近、思います
私の父は
私が5歳、弟が3歳の時に
すでに母に対して
「離婚してくれ」
「申し訳ないけれど子供はお前が育ててくれ」
「金はもちろん払う」
と告げたそうです
離婚をしたい男性からしたら
至極当然な言い方かもしれません
最近では
お子さんを自分でも育てたい、
という方もいらっしゃるかもしれません
この父の申し出に対して
当時、昭和55年
まだまだ
女が一人で子供を育てていく
シングルマザーということに対しては
今ほどの理解とか
当たり前、よくあること
といった感覚はなかったようです
母は、薬剤師という女性としては羨ましがられるような
十分に自立することも可能であった仕事を持ちながら
この父の申し出に対しては
とても応じることはできなかったようです
「一人で子供を育てていく自信がなかった」
そう母は言っていました
そして
それから9年
今度は
離婚が決定的になるような出来事が起きました
すでに9年前に父は母に対して離婚を申し出ていたからでしょうか
そういえば
思い返せば
父が母に対して笑いかけたことも
談笑したことも
穏やかな表情を見せたことはありませんでした
母と一緒にいるときには
いつも
表情が強張っていたように思います
でも
いわゆる物心ついた時から「その状態」だった私は
「夫婦ってそんなもの」と思っていました
その状態しか見たことがなかったからですね
夫婦が仲が良い状態
というものを見たことがなかったので
夫婦とは、そういうもの
と思っていたわけなのです
そして
14歳の時
離婚が決定的になるような出来事が起きましたが
父は
私が20歳、弟が18歳になって大学になるまでは
私たちと同居してくれていました
それから
家を出たので
私たちは
父と自由に、自ら
連絡を取り、会うことが可能でした
もっとも
25歳くらいまでは
調停・訴訟の「戦時下」にありましたので
父からしたら私たちは
母の元にいるスパイのような存在だったからか
私としては
どこか
父はよそよそしいように感じていました
そして
25歳くらいの時
訴訟上の和解により
私の両親はようやく離婚をしました
私にとっては
ようやく「終戦」を迎えたわけです
今にして思うと
あの戦争はなんだったのか
と思います
母は
何を求めていたのか
何をそんなに拒否していたのか
何をそんなに悔しいのか
その後の
敗戦処理?(笑)
は
その研究分析でした
私の母は
「戦後」も
ずっと悔しい、悔しい、と
現在に至るまで
まるで
戦争体験の語り部のように
今でも
壊れたテープレコーダーのように
当時のことを
感情も鮮明に
初めて会う人に語ります
以前に取材を受けたときは
3時間半もしゃべり倒したほどです(笑)
私は
当初
「娘」ですから
なんとか
その母の感情を癒してあげたい
癒してあげることはできないのだろうか
と
おそらくこの世界、この業界に入ったのだと思います
そして
今では
母のような状態、気持ちの女性たちを相手に仕事をしています
しかし
母を癒すことは
永遠にできませんでした
(まだ母は生きていますが
おそらく死ぬまでこの状態なのでしょう、と思うからです笑)
では
母は
何を求めていたのだろう??
離婚、という
離婚をしたい女性
離婚により新しい人生を生きたい女性たちにとっては
私は救世主であり
ありがたがられる存在
しかし
当時の母のように
離婚したくない人にとっては
悪魔のような存在(笑)
と、
最近、
自分の中の奥深くにある葛藤に
気づくようになりました
なぜ
母は離婚をしたくなかったのだろう??
あんなに拒んでいたんだろう??
母は
「そのまま」が良かったのだと思います
父が
他の女性の元へ行っても
樹木希林さんのように
自分は最後まで「妻」という立場にいたかった
それが
どのような心境や気持ちからなのか
は
私からは30年経ってもわかりません
それは体裁からなのか
世間体からなのか
プライドなのか
カッコ悪いからなのか
いくら考えてもわかりません
そんな
形式的なだけのもの
形骸化したもの
意味ないじゃん
愛し愛され合っていないのなら
そういう意見もあると思います
実際に、そう言って
離婚を望む女性たちは沢山います
形骸化していても
形式だけでも
それでも
という意見もあると思います
もちろん
どちらも正解、不正解、正しい、間違い、はない
とにかく母は
「そのまま」が良かった
しかし
父は「そのまま」では嫌だった
離婚、って
そういうものなのでしょうね
どちらが悪いもない
どちらが正しいもない
どちらも正しければ
どちらも間違っている
離婚、って
ものすごいパラドックスだな
と
最近よく
思います